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ストレスと疲労は味方か敵か

2023年5月27日更新

こんにちは、けんこう総研のタニカワです。今日はちょっと特別な話題を持ってきました。それは一般的にあまり興味を持たれないかもしれませんが、人間の生理や心理を理解するうえで非常に重要な要素です。それは「ストレス」と「疲労」についてです。

「ストレス」と「疲労」

皆さんは一度もストレスを感じたことがない、と言える人は少ないでしょう。ストレスとは私たちが日々直面するさまざまな要求や負荷に対する反応で、これには肉体的な負荷だけでなく、精神的なプレッシャーも含まれます。

ところで、かつてハンス・セリエという科学者がいました。彼は「一般適応症候群」という概念を提唱しました。これは身体に加えられるどのような要求(負荷)に対しても、特殊的でない一般的な反応が起こるという理論です。彼は生命体が長い年月を経て進化してきた過程を見れば、それは何といっても地球上で最も壮大な適応的前進だっ
たと主張しました。

「ストレス」は生命体を防衛している

ストレス反応は、この適応の一部と考えることができます。私たちの体は、日々の生活の中で経験するストレスに対する防御的なメカニズムを発動し、それがストレス反応です。これは必ずしも病的な変化ではなく、身体組織に若干の損傷の兆候が現れることもありますが、それらの大部分は生命体の防衛的なメカニズム、つまり適応反応の一部と言えます。

つぎに、「疲労」について少しお話しします。セリエは疲労現象を生命体の正常な対応現象として位置づけています。彼はこれを異常や病的現象とは考えていませんでした。彼の視点から見れば、”fatigue(疲労)”という言葉は、彼の著書の500ページにわたりわずか2回しか登場せず、それもストレス症状の一部として簡単に触れられているに過ぎません。これは”stress(ストレス)”という言葉に対して繰り返し、いろいろな角度から解説が繰り返されていることと比較すると、”fatigue”については非常に簡単に扱われていると言えます。

セリエの考え方とは異なり、バートリーと言う別の研究者は、「fatigue(疲労)」を細胞間の機能不全と定義し、疲労を異常あるいは混乱した状態と解釈しています。つまり、セリエとバートリーの間には、疲労という現象に対する理解と解釈が根本的に異なるということです。

「ストレス」と「疲労」は進化を続けるためのもの

ところで、私たちが普段感じているストレスや疲労は、一見するとネガティブなものに見えるかもしれません。しかし、これらは私たちの体が周囲の環境に適応しようとするときに発生する自然な反応です。それらは生物が環境に対応し、進化を続けるための一部と言えます。

私たちがストレスを感じ、疲労を経験することで、生命体としての私たちの生き抜く力、進化する力が鍛えられ、維持されているのかもしれません。そう考えると、ストレスや疲労も決してネガティブなものだけではなく、私たちの成長と進化を助ける重要な要素と言えるでしょう。

それでは、話題を少し変えて、疲労感について深堀りしてみましょう。

疲労感と疲労は、まったく別物

しばしば人々は「疲労感」を「主観的なもの」と考え、客観的な測定が困難であるために、これを敬遠することがあります。しかし、私たちはここで一歩立ち止まり、疲労感が実は生体の防衛機能として重要な役割を果たしているという視点を考えてみるべきです。

たとえば、わずかに重い荷物を片手で持っていて手が疲れてきた時、私たちは直感的にその荷物を他の手に持ち替えます。これは私たちの体が疲労感を警告信号として発して、これ以上の疲労を避けるように働いている一例です。このような主観的で測定しにくい疲労感は、科学的な疲労研究家から見れば「非科学的」なものとして避けられがちです。

しかし、これら捉えにくいものをどのように科学的に取り扱うかは、研究者にとって重要な問題となります。私たちの体はただの部品の集まりではありません。それぞれが連携して動く高度なシステムです。例えば、自転車がいくつかの部品から成り立っているように、それぞれの部品がしっかりと動かなければ自転車は前に進むことができません。

同じように、私たちの身体も筋肉や細胞、神経などの異なる部分が一緒に働き、私たちを健康に保つために必要な仕事を果たしています。これらすべては、私たちの脳、すなわち「中枢神経系」によってコントロールされています。この脳がチームのリーダーのような存在で、カラダ全体をうまく動かす役割を果たしています。

私たちの体が疲れを感じる理由とその重要性

だから、もし私たちが疲れたとき、それはただ一部の筋肉や細胞が疲れただけではないのです。それは、体全体が一緒に働いて何かを乗り越えようとしている証拠です。だから、私たちが疲れを感じるとき、それは実は体全体が一緒に働いている証拠なのです。

そして、その疲れやストレスは、私たちが周りの環境に適応するための重要なメッセージなのです。だから、疲れを感じたときは、体全体が一緒に働いている証拠であり、それを大切に思いましょうね。

だから、疲労という現象を理解するためには、生命体全体としての複雑なシステムを見る視点が必要なのです。

もう一つ、疲労」について、新たな視点から考える機会を、ご提供できればと思います。

疲労を味方につける考え方

「疲労」とは一見するとネガティブなものかもしれませんが、それは私たちの体が環境や状況に適応しようとする一部であり、これを理解することは生命体としての私たちの存在を理解する一歩とも言えます。私たちが経験する疲労は、実際には私たちの身体がその環境に対して最善を尽くして適応しようとしているサインです。そしてそれは、私たちが生き抜く力を育て、維持する一助となります。

疲労現象を単純に個々の筋肉や細胞、神経過程に分けて考えるのではなく、全体としての生命体、つまり私たちの体がどのようにこれらの疲労現象を統合し、それに対応しているかを考えることが重要です。私たちの体は非常に複雑なシステムであり、その中枢神経系の制御のもとに活動し、疲労に対応しています。

最終的に、疲労感というものは、我々が適応し、進化し、生き抜くための重要な要素であり、それを理解することは、私たちが自身の健康を管理し、最高のパフォーマンスを発揮する上での一助となるでしょう。

これらの考えが、皆さんにとって有益であり、そして、疲労感とその影響についての新たな視点を提供できれば幸いです。今日の講演が皆さんの生活や考え方に少しでも役立てれば嬉しいです。

文献:HiroshiKano; 1985,A PRELIMINARY VIEW ON THE PROBLEM OFSTRESS AND HUMAN ERROR ,労働科学 61-1,1-13

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