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ストレス研究memo

精神疲労によって引き起こされるヒューマンエラーの原因

2023年5月29日更新

こんにちはけんこう総研代表講師のタニカワです。さて今回は、精神疲労という問題について考えてみたいと思います。そしてその中で特に、私たちは「注意の縮小」という現象を深く探っていきます。

注意の縮小

まず、科学者のBartlett博士は、精神疲労の一つの大きな特徴として「視野の狭まり」を挙げています。これは、例えば飛行機のコックピットでの実験から明らかになったもので、飛行機のパイロットが長時間飛行を続けると、計器盤やその周りの変化を見落としがちになることを見つけました。つまり、疲労が進行すると注意が集中する範囲が狭まる、これが彼の見つけた現象です。

次に、Verwoerdという科学者も、20年ほど前に同じような現象を指摘しています。彼が使った方法はちょっと面白いです。横に並べられた10個の窓のそれぞれに、ランダムな順序で刺激が呈示され、それを見つけたらボタンを押さなければならないというものでした。この実験でも、疲労が進むにつれて、視野の周辺部に近い窓に呈示された刺激への反応が、中央部よりも低下するという結果が得られました。

しかし、これらの研究結果は完全には説明できていません。例えば、Verwoerdの実験では、15名の被験者中、わずか4名しかデータが集められていなかったり、全ての被験者が周辺部の刺激への反応が特に低下するわけではなかったりします。

なぜ疲労によって注意の範囲が狭まるのか

そこで、なぜ疲労によって注意の範囲が狭まるのか、それは一体どういう理由があるのか、そしてそれがどういう影響を与えるのか、それらについて考えてみたいと思います。

まず、私たちの体はストレスがかかると、そのストレスが長続きしないように、また増加しないようにするための防御機構を持っています。例えば、情報の流入を制限することで、負荷をできるだけ少なくしようとするメカニズムが働くと考えられます。つまり、視野の中心部だけでなく、周辺部も含めて、入ってくる情報を減らして、体がストレスに耐えられるようにするわけです。これは、疲労が原因でなくても、さまざまなストレスがかかった時に起こります。このような注意の縮小や制限は、ストレスがかかると非特異的に見られる現象なのです。

では、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。それはおそらく、私たちの脳が「エネルギーの節約」をしようとしているからだと考えられます。精神的に疲労が溜まってくると、脳はエネルギーの消費を抑えるために、必要な情報だけに集中しようとします。その結果、私たちの注意力は、主要な情報だけに絞られ、それ以外の情報、特に視野の周辺の情報は見落としがちになるのです。

だからこそ、疲労時には特に、車の運転や機械の操作など、注意が必要な作業に取り組む際には十分注意を払う必要があるのです。視野の中心だけでなく、周辺部も含めてしっかりと視界を広げ、疲労が進行しても注意力を確保することが重要です。

以上が、精神疲労と注意の縮小についての考察です。これは一つの解釈でしかありませんが、疲労と注意力の関連性についてはこれからも研究が進められることでしょう。そしてその結果が、私たちがより健康的で、より効率的に日々を過ごすためのヒントになるようこれからの研究にも期待しましょう。

見落としと見逃しは違う

では、次に「見落とし」や「見逃し」について考えてみましょう。これらは、私たちが「不注意」によって引き起こす事故の大部分を占めています。特に、私たちは仕事や日常生活の中で、スイッチの開閉状態の見落としや点検対象の見逃しなどをよく経験します。これらは本人自身が気づくのが難しく、また、事故防止の観点からも非常に難しい問題です。

疲労が深刻な状態になると、このような「見落とし」や「見逃し」がより頻繁に起こります。例えば、発電所の制御室で働いている人々は、時々、計器パネルに対して「無関心状態」になることが報告されています。また、ビール瓶の検査作業においても、流れてくる瓶の列を注視しながら、不良瓶を見逃すことがあると言われています。

これらはすべて、人間が長時間同じ注意状態を維持することが困難であるという事実を示しています。疲労が溜まると、私たちの意識は時々作業から離れ、それが一瞬でも、あるいは短い時間でも続けば、それが見落としや見逃しの原因になるのです。

私たちの脳は、自然に「小休止」を取ることで、これらの問題を緩和しようとしています。つまり、私たちが物理的に手や足を休めるように、脳もまた、情報の入力を一時的に止めて「小休止」を取るのです。

この「小休止」の現象は、精神疲労が進行するとさらに頻繁に起こることが考えられます。ですから、疲労時には特に、見落としや見逃しがないように注意深く行動することが重要です。それが私たち自身の安全だけでなく、他人の安全にも繋がるからです。

まとめ

疲れると、誰でもどうしたって注意力が縮小し、重要な情報を見逃す可能性がでてきまう。しかし、適切な休息と自分自身の状態を理解することで、これらの問題を軽減することができます。私たちは皆、人間であり、時には疲労を感じることがあります。だからこそ、自分自身を大切にし、必要な休息を取ることが大切です。私たちが十分な休養を生活に取り入れ、健やかで充実した日々を送りましょう。

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