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ストレス研究memo

介護職の感情労働ジレンマ/ストレス研究memo

2023年1月21日更新

こんばんは、けんこう総研のタニカワです。今夜も感情労働の研究論文のお話しのつづきです。

介護職の感情労働は、身体介護においても生活支援においても機能訓練においても必要です。その多くは、利用者さんに素直にお風呂に入ってもらうためといった業務の円滑化を目的として行われています。
けれども介護士による感情労働の良い作用というのは、利用者さんの意欲を高め、承認欲求を満たし、安寧を実現する力を持ちます。

感情労働の深層演技事例

事例1
寝たきりの入居者のオムツ交換の際に、その入居者に腰を少し浮かせてもらった際などに心からの感謝の気持ちを表す。
(効果)
寝たきりの入居者に、「私は、介護士さんの役に立った」のだという感を味わってもらうことにつながる。

事例2
トイレまで介助されて歩行した入居者にねぎらいの言葉をかける。
(効果)
入居者に次もがんばろうという目標を与えることにつながる。

事例3
帰宅願望をあらわにして玄関に居座る利用者に対して、その不安や不満を和らげ、帰宅願望を弱めてもらうべく介護士が、本当は感じている苛立ちや焦りを隠して、笑顔を作って穏やかに対応します。

事例4
リハビリをやる気になってもらう。

事例5
入浴を面倒くさがっている利用者に入浴する気になってもらう。

様々な場面で感情労働は行われていて、介護職と感情労働は、切っても切り離せないものです。

感情労働は、介護職の行う業務の質を左右する

感情労働は、介護職の行う業務の質を左右します。感情労働が介護職のストレスになる一方で、介護職にとってその実施が不可欠であり、介護の質を左右する可能性を持つちます。

感情労働とは何か

感情労働を最初に行った博士は、A. R. Hochschild (ホックシールド)です。ホックシールドは感情労働を「自分自身の感情を誘発したり抑圧したりしな
がら、顧客のなかに適切な精神状態を作り出すために、自分の外見を維持する行為」感情をと言っています。また、感情を誘発したり抑圧したりすることを感情管理と名付けました。また、自分の本心をかくして言動を維持するための、「演技」をしなければならないのが感情労働の特徴です。

感情労働とは、サービス精神に尽きます

自分の表情やしぐさ、身振りなどを使って、顧客に働きかけることを感情労働の表層演技と言います。演技には、表層演技と深層演技があります。表層演技は、表面的な笑顔などです。いっぽう、深層演技は、相手への同情や共感・理解に基づいて行われます。

感情規則の複雑な問題

介護現場での感情労働には、二つの相反する感情規則が重層的に存在します。

利用者と適切な距離を取る

一つは,利用者と適切な距離を取ることです。これは、親密化を抑制する感情規則です。客観的で効果的な支援の実施や他の利用者とのバランスを欠く対応を抑制するために必須です。日常業務とのバランスを取るために求められます。

利用者に対する受容と共感を求める

もう一つは、利用者に対する受容と共感を求めることで、親密化を促進する感情規則です。これは信頼関係の構築・維持のために求められます。

この2つの感情規則は、個々の労働者間の感情労働のあり方の違いを生む要因となっています。
介護士Aさん
「仕事として一歩引いて入居者のことを見なきゃいけないものを、感情移入をものすごくしてしまったりとかっていうことで,『それはやっちゃいけないよ!』ってところまで介護職が突っ込んでしまう。」

管理者Bさん
「感情移入は、別にしてもいいんですけど、それがプロとしての仕事をまっとうできなくなるような感情移入の仕方がよくないと言っているだけで,感情移入しちゃいけないと言っているわけじゃないんです。」
この管理者の歯切れの悪い発言に、感情規則の重層性の状況がよく現れています。感情移入はしなければならないし、しすぎてもいけない。それは状況によって異なるし、利用者によって異なる。さらに、介護は、する側とされる側の相互作用で成り立つ以上,介護士の個々の状況や利用者との関係によっても異なってきます。
そのため、実践の場面では感情移入をするべきという親密化を求める感情規則と、あまりしてはいけないいう距離を取ることを求める感情規則が同時にできてしまいます。その間で着地点を手探りしなければならない状況に介護労働者はたたされます。そこで、個々の介護職で感情規則の重層性に対する葛藤への対処の
仕方に差異が生まれてしまいます。

距離を取る同僚を見てどう思いますか

距離を取る同僚を見て「冷たい」と考えますか?それとも、忙しい中いつまでもかかわる同僚を見て「なまけている」と考えますか?この関わり方の違いが同僚との間のケアを巡る方針や意見の違いとなり、さらには人間関係に影響を及ぼす要因ともなってしまうのが現状です。

感情労働者の自己評価の乱高下

感情労働は、普段から自己評価を乱高下を経験しがち」であるという知見があります。自らの感情を駆使する感情労働では,仕事ぶりを認められると自分の人格まで認められたように感じます。その反面、批判されると自分の人格も否定されたように感じやすい傾向があります。

介護士職は、利用者の話を気長に聞くような対応をする介護労働者は、往々にして周囲から「気が長い」「やさしい」という性格に対する評価されます。けれども実際にはその介護士さんは利用者の話を気長に聞くための感情管理の努力を行っているのです。けれどもそのような感情管理の技術や努力が周囲から評価されることはめったにないありません。話を気長に聞くという支援のあり方もその介護士の性格に基づく行為であると評価されてしまいます。

こうしてみると、感情労働は自身への評価のみならず、他者の評価にも影響を与えます。

3つ目の問題は、業務の高速化のなかで深層演技から表層演技へ後退する感情労働者と深層演技にこだわる「プロの天使」のあいだの確執の問題です。70 年代、飛行機の改良により客室乗務員の業務が大幅に増大したのに対し、多くの客室乗務員は乗客とのかかわり方を表層演技に後退させることで多くの日常業務をこなそうとしました。そのような感情労働者から見ると、あくまで深層演技にこだわる客室乗務員は「『ペースを乱す奴』として他の労働者の怒りを買う」(A. R. Hochschild 1983=2000: 150)

今夜は、感情規則の重層性問題について書き留めました。

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