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ストレス研究memo

定期的な運動は急性ストレスに対する精神的回復力についての研究

2024年5月13日更新

きのうに引き続いて、定期的な運動は、健康な人の急性ストレスに対する精神的な回復力と関連しているのかの研究の解説です。
米国イリノイ州シカゴ、シカゴ大学精神医学および行動神経科学部門人間行動薬理学研究室のエマ氏とハリエット氏の研究論文です。
定期的な身体運動をした人としなかった人の間で、急性心理社会的ストレス要因に対する心理生理学的反応を比較しています。

タニカワ研修講師による専門職員にむけた研修風景

運動習慣は身体だけでなく心理的ストレスにもポジティブに働くことから多くの企業研修で取り上げられています

標準化された心理社会的ストレッサーとは

心理学研究において一般的に用いられる、標準化されたストレス誘発手法を言います。
この研究では、トリアー社会的ストレステスト(TSST)が用いられます。
TSSTは、
①・参加者が事前に準備なしで特定のトピックについて話すことを求められる課題

②・参加者が難しい計算を頭の中で解くことを求められる算数の計算を与えます。
公的な状況下でのパフォーマンスを要求して参加者の心理的ストレスと生理的反応を引き出し、ストレス応答を科学的に評価するために設計されています。

運動している人としていない人の間で、急性ストレスに対する反応の比較実験結果

・心拍数は、座りっぱなしの参加者よりも定期的に運動する人の方が有意に低い。
・ストレスや全体的な課題に対する心血管反応性はグループ間で差がなかった。
・コルチゾールレベルに有意な差はありませんでした。
・主観的な気分状態はベースラインではグループ間で差がなかったが、タスクに対する感情的な反応はグループ間で異なった。
・定期的に運動した参加者は、座りっぱなしの参加者に比べて、ストレス後のポジティブな感情の低下が少なかった。

運動する人と運動しない人の間で、急性ストレスに対する反応のまとめ

定期的に運動をする人は急性ストレスに対する耐性が高く、それが将来の健康状態の悪化から身を守ってくれる。

運動をする人は、ストレスの多い状況下でもポジティブな感情の低下が少ない。
習慣的な身体活動が健康な人のストレス耐性と関連していることを裏付ける証拠の一部です。
健康な成人を対象とした横断研究では、運動は幸福感の向上と関連付けられていますが、その有益な効果を示す経験的証拠は少ないです。運動習慣の有無は、肯定的または否定的という性格の尺度に違いはありませんでした。
定期的な運動は、ポジティブな気分のベースラインレベルの向上とは関連しません。
最近の理論では、ストレス中のネガティブな感情とは独立したポジティブな感情の役割がより重要視され始めています ( Folkman、2008 )。

ストレス過程におけるポジティブな感情の例

何十年もの間、ストレスのプロセスは主に否定的な感情の観点から説明されてきました。しかし、極度のストレス状況下ではポジティブな感情とネガティブな感情が同時に発生するという確固たる証拠は、ストレスの過程におけるポジティブな感情の役割を考慮する必要性を示唆しています。ポジティブな感情にはストレスプロセスにおいて重要な機能があり、苦痛を調節するプロセスとは異なる対処プロセスに関連していることが証拠によって示されています。今後の研究にポジティブな感情を含めることは、何十年もネガティブな感情のみにほぼ独占的に関心を持ってきたことによる、研究と臨床実践の間の不均衡に対処するのに役立つだろう。

ポジティブな感情は、死亡リスクの低下に関連している

ポジティブな感情は、死亡リスクの低下に関連しています。定期的に運動を行っている人がストレスにさらされている間、よりポジティブな気分を維持できる能力は、ストレス負荷の蓄積を最小限に抑え、保護機能として機能しているといえます。

状況や、個性、または対処方法に対する個人の評価が、定期的に運動を行っている人の方がよりポジティブであるといえるでしょう。これは、ポジティブな対処戦略は、ストレス時のより大きなポジティブな感情と関連しています( Folkman and Moskowitz, 2000 , 2004 ; Lazarus, 2000 )。
今後の研究では、ストレスの多い状況の一次および二次評価、および運動者と非運動者が利用するさまざまな対処戦略の評価にも目を向けましょう。
運動をしていない人に比べて、運動をしている人の心拍数は全体的に著しく低い(de Geus et al., 1990 , 1993 ; Summers et al., 1999 )。

自己申告による週あたりの運動の頻度についての分析は、身体活動の客観的な尺度よりも信頼性の低い自己申告の運動レベルに依存していました。ベースラインの心拍数と自己申告の運動頻度との間に有意な関係があることは、妥当性を裏付けとなるでしょう。

参考文献

Susan Folkman;2007年The case for positive emotions in the stress process;An International誌(21) 13~14頁

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