「タニカワさん、何をやっていかなくてはならないかが、本当にス~っと光がさしてくる感じで見えてくるようになりましたよ…」──薬品メーカーの保健師の方の言葉です。
これは、一昨年から始まったストレスチェックの義務化伴いメンタル不調者を減らすことを考えて、何が必要かよく分からない中、さまざま講習を定期的に行いるにもかかわらず不調者は増加する一方で、弊社のコンサルティング研修を受けられ方との会話です。
よくセミナーなどで、「何を勉強すれば効果が得られますか?」とか、「こういう勉強や資格を取ろうと思っていますが、職場で役に立ちますか?」といった質問を受けることがあります。人事や総務で健康推進担当、若しくは労働安全担当でいらっしゃるには、産業保健として身に着けておかなければならない知識、ノウハウといったものを、習得しておきたい、ということでしょう。
この点に関しては、気持ちはよく分かります。誰でもそうですが、知識をアウトプットできればそれにこしたことはありませんし、勉強しておくことで少しでも職場環境が良くなる…と思うのは、ある意味当然だからです。
しかし、この「勉強」という言葉には、とても注意が必要です。「勉強」という意味を本質的な意味で理解していないと、産業保健、しかも社員の健康を管理する担当者にも関わらず、いわゆる学生時代の勉強と同じことをしてしまう危険性があるからです。
言うまでもないことですが、「勉強」と一口に言っても、様々な意味があります。大阪では、値段を安くすることを「勉強しまっせ」とか、安くしてもらうのに「勉強してよ~」なんて言ったりします。
重要なことは、「勉強」とは、効果を出すため、ひいてはメンタル不調者を減らすという数字を出すためにするものです。将来のために勉強して…という漠然とした意味で使う人が多いですが、企業にはそんな悠長な時間はありません。
そもそも、産業保健とは、働く人の健康管理と共に、社員一人ひとりの心身の健康を維持増進させることで事業を成長させ、ひいては会社組織全体を活性化させ、経済的にもハッピーになる。その目的遂行のためのベースキャンプともなる、裏方部隊として働く重要な部署でもあるのです。
社員の心身の健康への配慮とは具体的にどうしたらよいのか…これらを戦略的に取り組むために自分の勤務する事業やビジネスに関わる、あらゆる環境にアンテナを立てて、それを改善する環境調整をします。この調整こそが担当者が勉強をする意義ではないでしょうか。
大阪商人ではありませんが、やってナンボ、どれだけ成長させてナンボ。これを実現させるための努力こそが勉強の中身です。そういう意味では、大阪の「勉強」というコトバ、決して的外れではないと言えるでしょう。
心身の健康管理の知識やノウハウを得ておこう…というお気持ちは分かります。しかし、それだけでは「会社」「経費」「経営者」のお金の存在を忘れがちです。
ビジネスにおける勉強とは、企業の一部所として何をすれば企業価値を上げられるか、どうすれば社員が生き生きと働き生産性を上げられるはなのです。「うちは健康推進課だから関係ない」「私は保健師だから経営のことなどんて門外漢」と、まさに木を見て森を見ずになっていませんか。
漠然と健康知識を増やしても、ご自身が行動変容しなければ意味がないように、ひるがえって貴社社員に還元できない知識が、ただの趣味にしかなっていないことは言うまでもないことでしょう。
健康支援において最も重要なことは、「自社が何を結果として出したいのか」を決めることです。まず第一番にこれがなければ、対策が定まりません。研修でもセミナーでも「コア(核)」をつくり、コアは社員に対して、どのような効果を上げて貴社の生産性を上げるのか…を、ひとつひとつ実現していくことこそ、真の「勉強」なのです。
あなたは、産業保健者として何を提供しているのか、どういう存在になっていますか? 自分が提供する知識やノウハウは、しっかり社員に還元できていますか? 定まっていれば、あなたがやるべき道は、自ずと見えてきます。




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