「タニカワ先生、社員の健康教育に会社がどのくらい投資すれば、ぶっちゃけ元を回収できるんですか?」このご質問は、あるメーカー団体での経営者オフ会で飲んでた時のお話しです。
人財教育に健康リテラシーをあげようと投資をしたけどたいした成果が目に見えて表れなかった。投資をして回収する、つまりリターンがなかったら「損をした」と経営者が判断するのは、短期スパンで何ヶ月とみているのでしょう?
「損をした」、「得した」と言う言い方自体はは如何なものかと思いますが、企業にとって人材教育とは、リテラシーを上が、一人ひとりの健康意識を高めることにあります。
そうして心と身体の健康管理ができてくることで、仕事への取組みが変化してくるのですから。研修とは、継続して繰り返し反復することが大切です。
ここでは先ず、会社にとっての健康経営の本質として、「会社はメンタルヘルス対策に投資をして、より多くの生産性を上げる事に意義がある」ということを確認しておきましょう。
健康指標を表す2つの方程式
投資した以上のリターンは、それこそ利益や利潤に匹敵します。けれども職場にとっての利潤とは何かと考えた時、基本的に二つの考え方があります。
1つは、人財教育にかかるコストに適正利潤を加えたものが会社の福利厚生費の一環にする場合。2つ目は、福利厚生費から投資額を差し引いたものを利潤と考える場合。一人前の社員を育てるために、これだけのコストがかかった。それを引いた残りが利潤と考える会社は、おそらく中小企業では殆どではないでしょうか。そう考えると、入社した社員がすぐ離職してしまったら大きなマイナスとなり、「人財教育に投資をして損をした」ということになります。
しかし、1つ目と2つ目の考え方は、似ているように見えますが、意味するところは全く変わってきます。
昔ながらの総括主義の人財教育
1つ目は、「我が社では、社員に対しこれだけの人材教育をしています。教育費にあたってはこれだけの投資をするのだから、会社として業績を上げてもらうために、これだけのノルマをのせさせてもらいます。その分、働いてください。」という、会社の都合にのっとって作られています。会社はステークホルダー、社員のものです。そのため利益を追求しなければなりません。ましてや市場競争しているのですからこの発想で、社員教育をしてしまうのは、実情仕方のないことなのかもしれません。
この考え方に問題があるのは、読者の皆さまはすぐにおわかりになったでしょう。先ず、人財教育・健康教育に投資するコストです。果たして職場にとってどのくらいが適正なのか、可視化できない部分であるので投資をしぶるのもごもっともです。しかし、こういう考えは、
働く社員の労働安全災害やメンタルヘルスなどの『健康リスク』と生産性アップへのリターンの正常な関係
には、まったく馴染みません。
会社の役割は、生産性アップさせるための企業努力
社員の健康教育はやってみなければわかりません。人財教育は、このわからない、見えるかしづらいということがリスクでもあります。リスクを負い、健康教育やメンタルヘルス対策などの投資にキャッシュを投入し、職場でもより働き勝手がよくなる職場環境を工夫するといった苦労を人事・総務の方がたがしてようやく育ってくるのが利潤です。それを不断に考えていくのが健康経営なのです。
生産性向上への健康経営4つのレバー
会社は社員の利潤を最大限にするため不断に努力をするのは全く持って正しいのですが、かといって、社員に檄(げき)を飛ばして長時間労働させるといった闇雲な努力で生産性は決して向上しません。
健康経営のレバーは大きく4つに分けられます。1つ目のレバーは、その職場の基盤となっているものはどのような体質なのかがあげられます。職場としての能力や、地域性といった文化や仕組みです。
コアコンピタシーって何?
貴殿は、「コアコンピタシー」という経済用語があります。コアコンピタシーとは、核になる能力、つまり社員の得意なものという意味です。職場の健康状態で言うと、その職場の得意な領域は何であり、得意業務を会社全体の中でどう位置付けて、会社の中でどういう職場環境を伸ばすか、あるいはどういう職場環境を改善して生産性をアップしていくか、等について考えていかなければなりません。このコアコンピタシーが健康経営の上で、まずその基盤として自己理解するうえで極めて重要です。
また健康保険組合や産業保健担当等の連携も、基礎体質として重要です。これら諸々があって、働く社員の動機づけする仕組みはどうなっているのか、新しい健康経営へにチャレンジしていく仕組みはあるか、不断にメンタルヘルス対策と共に健康管理をしていくような仕組みになっているかといったチェック機能の仕組み、システムもこの基礎体質の中には含まれます。基礎体質というのは、いわば日常的な仕事の仕方や基礎体力の部分で、時によっては、この日常的な仕事の仕方を大きく変えていく必要性もでてきます。
今日は4つの健康経営についての最初のレバーである、基礎体質について、長々とお話ししてきました。貴殿の職場や部署の基礎体質は、どのような体質をお持ちですか?
それでは今日も元気に!今日も健やかに。




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